《お産日記PART2 入院〜退院》

 

5月15日(産後1日目)

朝5時頃まで時計を見ていたのを覚えている。
ふと目が覚めたら6時すぎ。小一時間は眠ったらしい。でも、体は思ったより元気一杯。
ふとお腹に手を当ててみる。何の音もしない。ペチャンコだ。
毎朝元気に「おはよう!」と蹴りまくってたサンはもう何も言わない。
しーんとなったお腹に気が付いたら、ふとすごい不安になる。
新生児室で、私の産んだ子供、しゅんは元気にしてるんだろうか。
いや、それよりも私は本当に子供を産んだのだろうか?
このペチャンコなお腹…もしかしたら、実は妊娠したことすら長い長い夢だったりして…。
限りなく不安になり、ベッドから起き上がってゴソゴソ探る。
サイドテーブルの上に助産婦さんの置いていったメッセージカードがあった。
「いいお産に感動しました」と助産婦さんからのメッセージと色紙。
色紙にはしっかりとサンの手形&足型が押されていた。
「本当に、本当に私は産んだんだーー!」やっと実感でき、ベッドの上で一人また感激で号泣した。

朝食の前に、元気な声で実家の家族とダンナに電話。その後メールチェック。
早速何十通ものお祝いメールが届いていて、ひとつひとつ読みながら、笑ったり感激したり、
また涙したりひとしきり楽しむ。

相変わらず、というより、昨日よりひどく切開した傷跡が痛む。
普通はドーナツクッションに座って解消するのだろうが、あまりにも腫れが酷く
ドーナツクッションの上に、足を開いて正座をしても、傷口がベッドに
付いてしまうほど見事に腫れあがっていた。
一体、どんな風になってしまったのだろう??
見てみたい気持ちも半分、恐ろしくて見たくない気持ちも半分・・・。

朝食の後、授乳指導を受ける。実際の授乳はその後。
赤ちゃんにおっぱいをあげるのって、どんな感じなんだろう??
ドキドキわくわくする。
 
朝、産婦人科の外来窓口が開くと同時に、今までお世話になった
看護婦さんたちに、無事出産のご報告をしに行った。
顔なじみの看護婦さんたちが口々に「おめでとう!本当によかったね。
いつもみんなで応援してたのよー。」と涙ぐんでくれて
私も思わず感極まって、またもや一緒にもらい泣き!

お昼前から、いよいよ授乳の開始。

授乳室に入ると、正面に手順を書いた紙が張ってある。

「オムツの交換→体重測定→授乳(母乳)→また体重測定
→母乳の飲んだ量を測り、不足分をミルクで補充する。(日齢×20CC)
最後にまたオムツ交換」以上で終了。

初めての授乳。
意気込んでオッパイを口に含ませてみたものの、しゅんは全然吸い付く気配がない。
吸い付くどころか、口元に近づけても全く口をあけようともしない。
初めてのおっぱい、ママも恐る恐るだが、しゅんも同様よく分かってないようだ。
何度かチャレンジしてみたが、結局うまくいかず。
誰でも初日はこんなものだと聞いてちょっと気を取り直す。
今回は諦めて、哺乳瓶からの粉ミルクだけ飲んでもらおうとした。
ところが哺乳瓶の乳首すら口に入れてくれず、しゅんは「イヤイヤ〜」をしながら
泣くばかり。

途方に暮れていると、看護婦さんが来てくれて見本を見せてくれる。
しゅんは看護婦さんからもらうミルクをおいしそうにチューチュー飲んでいる。
「どうして?何が違うの?」目からウロコ!!
「哺乳瓶は、角度が悪いと赤ちゃんが飲みにくくなるから、あまりあごを
引き過ぎないように、指一本あご下に入るくらいの感じで。
瓶はあまり立てすぎず寝かせて、赤ちゃんの顔と垂直に持たないと
吸い付けないから。息が合わないと赤ちゃんは飲んでくれないのよ。」
と、あれこれ指導される。
そうか、赤ちゃんも意外と注文がウルサイものなんだなー。
看護婦さんに言われた通り試してみたら、しゅんはちゃんとチューチュー
飲んでくれた。

どうにか規定の20CCを飲み終わり、背中をトントンしてゲップさせる。
これも案の定してくれない。パンパン叩くのもちょっと可哀想かな〜と
またもや悩んで固まってると、また看護婦さんが来てくれた。
「こうして背中(気道)をまっすぐにして、胃の後ろ側あたりを
叩けば出てくるのよ。
手のひらでパンパン叩くと痛いから、手のひらを少し丸めて
中の空気で柔らかく叩いてあげるような感じでね。」と教わる。

 

 

 


授乳が終わってオムツ替え。
古いオムツをはずした瞬間、噴水のようにオシッコのシャワー!
大慌てで「おしりふき」を2〜3枚引っ掴んで、前に栓をする。
看護婦さん、冷静に「男の子はそういうことよくありますから、オムツを替える時
には必ず新しいものを下に敷いてから替えてあげてください。
そうすれば、今の様にオシッコをされても新しいオムツが受け止めてくれますから。」
と教わり、「ナルホド〜!」と納得。

午後、教授回診。
先生方がゾロゾロ列を作って診察に回る。
カーテン越しに、廊下の方で聞きなれた先生の声がした。
「ここは佐藤さんです。」
「・・・えっと、どの佐藤さんだっけ?」
(この日、同じ苗字の患者さんが4人いたらしい)
先生すかさず「一番喜んでる佐藤さんです。」「あー!一番喜んでる佐藤さんね。」
先生がカーテンを開けるや否や、私は満面の笑顔で「ハイ一番喜んでる佐藤です!」
と元気にお返事。先生方爆笑!
先生がお腹の状態を診察。「子宮の戻りがすごくいいねー。」
昨晩のマッサージの成果があったようでほっとした。

「なに、出産直後にメール100人に出したんだって〜?」
・・・先生、なんでそんなこと知ってるんだろう??
「・・・いえ、100人に出したんじゃなくて、出したのは60数人で、お返事くれた人に、
また追加でお返事書いたのが30人くらいで・・・。」一応ごにょごにょ言い分け。
「あ、産後ってあんまり目を使わずに安静にしてなくちゃいけないんですよね。」
と思い出したように言う私に先生「あなたには安静は必要ないよ。」だって。(笑)
これって冗談なのか本当なのかイマイチよく分からなかった。

午後の授乳。

今度はしゅんはオッパイも飲んでくれるだろうか?
さっき哺乳瓶で教わった「角度」と「タイミング」を参考に、上手く息を合わせようと
やってみる。
さっきは、口を開けてすらくれなかったのが、初めて小さな口をぱっくり開けて
乳首を含んでくれた。嬉しい!!でもそれだけで、吸っている感じは全くない。
でも、それだけでもさっきよりは大きな進歩だ。
めげずに一歩ずつ前進しよう。

夜の授乳。

昼間の調子で再度チャレンジしてみる。
また口に含んでくれた。そして、「チューチュー」と吸ってくれた。ヤッター!
嬉しくて涙が出そうだった。
果たしてどのくらい飲んでくれたのだろう?
ワクワクしながら体重計に乗せてみる。
・・・・さっきと全く同じ体重。
つまり、「チューチュー」とは音ばかりで、実は1ccも飲んでくれてなかったのだ。
ものすごいショック!!
でも、そんな私を励ますように、しゅんはニッコリ笑いかけてくれた。
そんな最高の笑顔が励みになって、また明日から頑張ろう!と元気が湧いてきた。
まだまだ育児は今日始まったばかり。
これからどんどん仲良くなっていかねば!
ミルクは規定の20ccを飲んでくれたのでほっとした。
しゅんは、ミルクを飲む時、決まって「ファイティング・ポーズ」をする。(↑の写真参照)
なぜだか知らないが、両手のゲンコツがホッペに来てしまうのだ。
そんな飲み方をしてるのはしゅんだけなので、これも個性なのか?

しゅんの泣き声が少ししっかりしてきた感じ。
顔のむくみもだいぶ取れてすっきりしてきた。
ガンガン泣いていても、私が声をかけてやると「ピタッ!」と泣き止んで
じっと目を見て笑ってくれる。

夜、またまた友達にメールを送ったり、電話をしたりしていた。
病院内ではPHSは使えないので、地下の駐車場出口を出たところで
友達と長話しをしていたら、うっかり消灯時間を過ぎてしまい、
守衛さんが入り口の鍵を閉めてしまった。
慌ててドアの前に戻ったら、気が付いてくれて笑いながら開けてくれた。
やれやれ危ないところだった!

夜、消灯過ぎてから、傷口の腫れたところがどうなっているのか
どうしても見てみたい衝動に駆られた。
ベッド周りのカーテンを閉めて、電気をつけて下から鏡を当ててみた。
想像をはるかに絶するあまりの状態に、「見なければよかった!」と
すごく後悔した。


 
5/16 産後2日目


今日から早朝5時の授乳がスタートするため、朝4時半に起きて、
オッパイがよく出るように、マッサージした後、温かい紅茶を飲んで
リラックス。

夜の授乳から、たった4時間弱しか眠る時間がないが、それでも
久々に4時間も眠ったので、すごくよく寝た爽快感!
出産からまる一日経っているのにまだ体中が痛い。
今日からシャワーに入れるので、早く授乳を終えて入りたくてしょうがない。
 
朝一の授乳は、夕べとほとんど進歩なし。
授乳後の体重の変化も相変わらず0g
でも、とりあえずミルクはしっかり飲んでくれるようになったので、
それだけでも充分に生きていけるんだから、と、あまり気にせずに
いようと思った。
オムツとミルクに関しては、昨日よりだいぶ慣れてきた。
しゅんも、いつもおとなしく寝ていてくれて、他の子より手がかからない
ように感じる。

時々、うっすら片目を開けてこちらの様子を見る姿がものすごくかわいい。
この片目、いつになったら開くのだろう?
ちょっと不安になり、思わず看護婦さんに聞いてみたら、
「最初はまだむくみが取れていないのでよくあることですが、すぐに両目
開くようになるから大丈夫ですよ。」と言われる。
でも、この「片目でニンヤリ」がしゅんのトレードマークとなり、
みんなからも「片目のしゅんちゃん」と呼ばれかわいがってもらえた。
しゅんの顔は、本当に愛嬌があってかわいい。

オムツの時も、オッパイの時も、その顔を見ているだけでついつい
独り言が出てしまう。
「いっぱいウンチしたねー」とか「オッパイおいしい?」とか、いろいろ
話し掛けていたら、隣にいたママさんから「いつもここに来る度に
赤ちゃんにいっぱい話し掛けてあげてるね。それって、赤ちゃんが
とっても安心するいいことだよ。赤ちゃんすごく幸せだね。」
と言われた。
何もかもうまくいかなくてちょっと自信がなくなってた時に、そんな
言葉をかけてもらって、涙が出るほど嬉しかった。
「さっき部屋を出て行ったママさんにも聞かせてあげたいわ。」
・・・そういえば、さっき無言で恐い顔してオッパイしてた人がいたっけ?
 
朝食後、なんとなく腸の調子が活発になるのを感じた。
こんな傷口でトイレで頑張ったりして、大変なことになりゃしないだろーか?
想像するだけでも恐すぎる!
でも、この前お産した友達が「産後の便が恐くて頑張れなかったら
2〜3日便秘しちゃって、逆になかなか出てこなくて死ぬ思いをした。」
と言ってたことを思い出し、勇気を出してチャレンジ!
暖かいお茶をたくさん飲んで、慌てず騒がずトイレで30分リラックス。
で、何とか大事には至らず目標達成!
これで、明日から「快腸」だと思うとほっと安心。目の前バラ色!
 
お風呂に入ってからまた授乳室へ。
少しでも母乳の出がよくなるように、と、お風呂の中でオッパイを暖めたり
しっかりマッサージもして、今度こそ!と意気込んで行った。
でも、やはり前回と変わらず「チューチュー」するものの、授乳量は0gのまま・・・。
でも、ミルクはこの日の規定の30MLを軽くクリアー!
体重はちょっと減っていたが、どの赤ちゃんでもほとんどが産後の直後から
一時的に体重が落ちる磁気なので問題はなさそう。
もっとも、このミルクの飲み方を見れば、何も心配する必要ないのは一目瞭然・・・。
 
今日は、友達が面会に来てくれる予定なのに、しゅんはまだ片目が開かない。
昨日までに開いていてくれれば、かわいい顔をお披露目できたのに残念!
さすがに、もう2日も経ってるのでやっぱり心配。
試しに看護婦さんに「この子の両目が開いたところを見たことがありますか?」と
聞いてみたら、看護婦さんニッコリ「ありますよ〜さっきお風呂で両目でしたよ。」
な〜んだ、ちゃんと開くんだ。ならどうしてまた閉じちゃうんだろう?フシギ!
 
新生児室のベッドのネームプレートがママの名前になったままだったので
看護婦さんにお願いして、早速「隼祐」と、しゅんの名前を入れてもらった。
あれこれ考えて決めたこの名前がプレートに書かかれ、ベッドに貼られるのを
見ていたら、もう〜感無量!!!
 
友達が面会に来てくれた。
しゅんの顔を見て「そっくり〜!」とみんなで爆笑!
おじいちゃん、おばあちゃんもしゅんの顔を見に面会にきてくれた。
「しゅんはいつ見ても眠っているような同じ顔でつまらない」と
おじいちゃん、ちょっと残念そうだけど、嬉しそうに同じ顔のしゅんを前に
ずっとビデオカメラをまわしつづけていた。
 
午後から、だいぶ傷口の痛みが楽になり、腰をひねって横に正座すれば
何とかベッドの上に座れるくらいに回復していた。
(それまではあまりの痛さに、食事の時も授乳もほとんど半分中腰を浮かせた
状態のままでいたのだった!)
 
午後の授乳。

相変わらずしゅんはオッパイは飲まず、ミルクはよく飲む。

看護婦さんが「これは『飲む力がない』ということではなく、明らかに
『お母さんのオッパイに慣れていない』ということですね。」と早速オッパイチェック。
「大きさも充分あるし、形も悪くはないんだけど、やっぱり初産の人は乳首が
小さくて硬いから、赤ちゃんも吸い付きにくいんですね。少し補助器具を
使ってみましょう。」と、シリコンの「ニップシールド」を貸してくれた。
それを装着して試してみると、確かにしゅんの吸い付き方が変わって
「吸われている」という手ごたえが出てきた。
「今度こそ大丈夫!」と思ってまた体重計へ。
でも、やっぱり授乳量は0gのまま・・・。
さすがにちょっと気が滅入ってきた。
「まだ産後2日目でしょー?私がオッパイが出たのは3日目の午後だったわ。」
と、今じゃジャージャーオッパイが出るママさんがニッコリ、フォローしてくれた。
「本当〜〜?」なんだかすごく救われた気持ちになった。
そのママさんの抱っこしている赤ちゃんが、おいしそうにゴクゴク
オッパイを飲んで満足げな顔をしているのを見た。
まだ希望はある!私も明日にはこの人の様にジャージャー出るようになるのかな。
よ〜し!しゅんにもあんな顔で飲ませてあげよう!
また元気が復活してきた。
 
昼間、友達とひとしきりおしゃべりしてちょっと疲れたのか、夜、足が酷くむくんだ。
この「むくみ」を「産後の妊娠中毒症」っていうのだと、同室の人が教えてくれて
ちょっと恐くなった。
そういえば昨日、「もう妊娠中のカロリー&塩分制限もないから、今日からもう
何を食べてもいいんだ〜!」と調子に乗って、今までガマンしてきたポテトチップ
やケーキや炭酸飲料を山ほど飲み食いしたのだった。
やっぱりまだまだ油断できないんだわ〜と反省。
 
夜の授乳。

今度こそ!と意気込んで授乳室へ入った。
しかし、しゅんはぐっすり寝ていた。
何度ほっぺを突っついても、足の裏をくすぐっても、全く起きる気配はない。
当然、オッパイの時間など知る由もない。
そんなしゅんを前に、授乳時間を過ぎても、ずっと残業して苦戦している私に
看護婦さんも手伝ってくれたが、結局しゅんは起きなかった。
「ここまでしても起きないなんて、この子は大物だね。」と看護婦さんも諦め顔。
こんなに決意を新たに意気込んでやって来たママの気持ちも知らないで!
この夜は、楽しみにしていたデートをドタキャンされたような悲しい気持ちになった。

夜中、初めてオッパイが張って熱を持ってきた。
私の疲労もかなりピークに達していた。
 

 

 

5/17 産後3日目 


朝の授乳。
昨日の夜で疲れきったせいか、ちょっとふっ切れたような気持ち。
もうあんまり頑張らず、出来なきゃ出来ないでいいやー。
「ほれっ!」と、しゅんにオッパイをあげる。
今まで同様「チューチュー」と吸っているしゅんを横目に「どーせまた
飲んでないんだろうなぁ〜」と文句ブツブツ。
他のママさんとおしゃべりしながらしゅんを体重計にのせてみる。
「・・・4g」初めて授乳量が数字になって表れた。
飲んでくれた!たったの4cc、汗くらいの量だけど、しゅんがオッパイを
飲んでくれた!!
「やったー!」嬉しくて思わず叫んだ。
他のママさん達も「よかったねー!おめでとう!」と言ってくれた。
看護婦さんから「昨日の夜、最後までひとりで残業して頑張った甲斐が
あったね。」なんて言われ、思わず感激で涙がボロボロ出てきてしまった。
 
その次の授乳時間。
「もうしゅんは大丈夫!今度はどのくらい飲んでくれるかしら?」なんて
わくわくしながら体重計にのせてみると・・・なんで〜!?またもや0g・・・。
一体さっきと何が違うというのだろう??キツネにつままれたような気持ち。
「育児は一進一退」というけれど、その言葉の意味が、生後3日目にして
早くもちょっと分かるような気持ちになってきた。
 
しゅんの様子を見ていた看護婦さん「この子は飲める力があるのに
飲んでない。それは、オッパイ飲まなくても後でミルクをもらえる、という
ことをもう覚えちゃってるのよ。一生懸命オッパイに吸いつくより
楽にミルクをもらった方がいい、って、足元見られちゃったのね。」
生後3日目にして、もう「楽すること」を覚えてしまったなんて!
ちょっとムカついた。「よーし、今日から、オッパイ飲まなくても
すぐにミルクなんかあげないぞ〜!」と、「スパルタ方式」に変貌した。
その甲斐あってか、次の授乳の時には、また4CC飲んでくれた。
だいぶうまく吸い付けるようになったので、もうスップシールドを
はずしてあげてみよう、と思う。
 
仲良しになったママさんが、今日ひとり退院した。
きれいにお化粧して記念日用のよそ行きドレスのママと、
手作りのおくるみにくるまれ、フワフワのドレスを着た赤ちゃん。
さっきまで、パジャマ姿とタオル地のかいまきだった親子とは
まるで別人のようでとっても幸せそうな顔で看護婦さんたちと記念撮影。
これから家に帰ったら、赤ちゃんのいる夢のような生活がスタート
するんだなー。
私も早くしゅんと一緒に帰りたくて仕方がなくなった。

 

 


沐浴指導。
看護婦さんからベビーバスでの沐浴の手順を教わる。
たまたま、ベビー達の沐浴の時間だったらしく、裸ん坊にされたしゅんが
運ばれてきた。
若いカワイイ看護婦さんにお風呂に入れてもらって、気持ちよさそうに
だら〜んとリラックスしているしゅんについつい目がいってしまい、
沐浴の授業はまったく上の空になってしまった。
早くしゅんを自分でお風呂に入れたくてうずうずした。
 
夜、しゅんのオムツを替えたら、そのとたんブリブリウンチをされてしまい、
あらあら〜!と再度替えたら、またその直後にウンチでまたまたオムツ替え。
ものの5分で3回もオムツを替える始末。
病院のオムツながら「何ともったいない!」と、ついつい思ってしまった。
これが自分の家だったら本気で腹が立ちそうだ。


 
5/18  産後4日目

 
朝の授乳から、しゅんはだいぶオッパイに慣れてくれたようで
少しずつ飲む量が増えてきた。
といっても、まだ10ccとか14ccとかだが、それでも数字になって見える
だけで、ものすごく嬉しい。
オッパイを吸わせている時間もまだ両方で一回30分もかかってしまうが、
この授乳量の数字を見ると、嬉しくてそんな疲れも吹き飛んでしまう気がする。
 
いよいよお楽しみの沐浴実習。
ベッドからしゅんを連れてきて、実際にお風呂に入れながら指導を受ける。
沐浴指導は、区の母親学級でも、育児講習会でも習ったし、昨日も
看護婦さんから指導を受けて手順はしっかり頭に入ってるはずなのに
いざ、本物の赤ちゃんを前にすると妙に緊張する。
落ち着いて、習った通りの手順で、左手のひらにしゅんの頭を乗せ、
親指と小指で耳を押さえて、右手で小さなお顔に「3の字」を描きながら
丁寧に洗ってあげた。
背中を洗う時、しゅんをうまくひっくり返せなくて、看護婦さんから
「手のひらじゃなく、腕全体で支えるようにひっくり返すと赤ちゃんが安心よ。」
と教わり、言われたとおりやってみる。
なるほどこの方が赤ちゃんも安定するな〜とママも安心。
湯船からあげて着替え台の方に連れて行くとき、ビショビショのしゅんを
思わずブンブン振って水気を切ってしまい、看護婦さんに
「赤ちゃんはお野菜じゃないですから水は切らなくていいです」とひと言。ヾ(^_^;)
 
まぁ、いろいろあったものの、何とか落ち着いて習った手順どおり沐浴が完了。
看護婦さんにも「そんな感じで大丈夫ですよ。」と言われ、ほっとしたが、
後からよくよく思い返してみると、やっぱり緊張してたせいか、しゅんの顔を、
洗面器のお湯ではなく、バスタブの中で洗ってしまったことを思い出し
「しまったー!」と慌ててしまった。
前日に面会に来てくれた妹が、デジカメで撮ったしゅんの画像を、
カードに加工して持ってきてくれた。
退院の時に、先生や看護婦さんに渡せるように、と、消灯後
ベッドの上で、そのカードに長い長い「感謝状」をせっせと書いた。
 
夜の授乳の時、今までの最高新記録、オッパイを20ccも飲んでくれた。
「たった20cc」ではあるが、生後2日目でやっとこさミルクを飲み終えた時
と同じ量、と考えると、この2日間、14回の練習でこんなにも成長して
くれたのか〜と、小さなしゅんに感謝の気持ちでいっぱいになる。
そばにいたママさんや看護婦さんたちにも
「しゅんくん、オッパイよく飲めるようになったねー。
なかなか上手に飲めなくって、初めて4cc飲んでくれた時には、
ママ思わず感激で泣いちゃってたもんねー。」と、みんなで喜んでくれた。


 
5/19  産後5日目(退院前日)

 
しゅんは、オッパイを32cc飲めるようになった。
もう、ちゃんと吸われて、母乳が出てくる感覚がはっきり出てきて、
しゅんの表情も心なしか安心して、おいしそうに飲んでいるように見えた。
昨日出産した新しい産婦さんが今日から授乳室のメンバーに加わった。
慣れない手つきで赤ちゃんにオッパイをあげていたが、なかなか
吸い付いてくれず、途方にくれた表情。
横目でゴクゴク飲んでいるしゅんをチラッと見て小さくため息。
「まだ産後初日でしょー?私が初めて4cc飲んでもらったのなんて、
オッパイが出たのは3日目の朝だったのよ。」
どこかで聞いたようなセリフ?一昨日自分が励まされたのと同じ
言葉をかけていた。
「本当〜?」ママさんちょっと安心した表情。
「ね?今こんなに上手になった先輩ママさんも、最初はそうだった
って聞くと安心するでしょう!」と看護婦さんもニコニコ。
ふふっ、あんなに残業続きの「居残り組」だった私としゅんが、
たった3日で「先輩面」なんかしちゃって!と、ちょっと照れてしまった。
 
退院前の診察。
産後初めてエコー画面を見た。子宮の中は真っ黒で何もない。
8ヶ月ぶりの真っ黒な画面。8ヶ月前まで長いことずっと見ていた
虚しい真っ黒な画面が、この時妙に懐かしく感じた。
先生が画面を指差し「胎盤も残ってないですね。でも、まだ
ここんとこ血の固まりか、胎盤の残りカスらしきものが見えるので
しばらく悪露は続くと思うから、産後の1ヶ月検診の時に経過を見ましょう。
退院後、酷く出血したり、大きな固まりが出てくるようなことがあったら
1ヶ月検診を待たずにすぐに来てね。とりあえずは問題ないでしょう。」
と簡単に説明。
「手術前からあった子宮の後屈は、やっぱりお産でも元に戻らなかったね。
まぁ、もともと生まれもっての形ってものもあるからねー。」
そうなんだ〜。ちょっとガッカリ。
診察は簡単に終わり。「先生、長い間本当にありがとうございました!」と
昨晩心をこめて書いた「感謝状」を先生に手渡した。
ラブレターを渡すみたいでちょっと緊張!(笑)
「後でゆ〜っくり読ませてもらうね。」と先生もちょっと嬉しそうにニヤニヤ。
 
夜の授乳の時、部屋に入ると、ベッドに寝かされていたしゅんの枕もとに
病院の名前の入った書類袋が置いてあった。
中を開けると、誕生後に記念撮影してもらったらしく、大きなしゅんの写真。
片目のまま、「ニヤリ」とお得意の笑顔のとてもいい写真が
ステキな台紙に収められていた。
病院のサービスでやってくれているらしい。なんてステキな出産祝い!
感激で胸が一杯になった。


 
5/20  産後6日目(退院の日)
 
午前中の最後の授乳の前に仲良しになったママさん達のお部屋に
おじゃまして、みんなで記念撮影&住所の交換。
「写真送るねーメールするねー!」と、みんなと名残惜しみながら
延々おしゃべりに花が咲く。
最後の授乳も終わり、新生児室の看護婦さん、助産婦さん達
ひとりひとりにお世話になったお礼をして部屋を出る。
 
ダンナが迎えに来てくれる時に、通り道にあるレンタルショップで
前から予約していた「新生児用チャイルドシート」の他に「ベビー体重計」
を借りてきてもらうように電話した。
ずっと、母乳の量を測ってミルクを足す方法でやってきたので、
やっぱりしばらくの間は同じ方法でやっていった方がやりやすいだろうし、
第一、途中でオッパイが出なくなって、しゅんがお腹をすかせるような
ことでもあったら大変だ!
 
お昼前、荷物をまとめているところにダンナのお迎えが来た。
会計を済ませ、最後の病院食を簡単にすすりこむ。
新生児室にしゅんを迎えに行った。
タオル地のかいまきを着せられていたしゅんに、かわいい刺繍のついた
真っ白なベビードレスを着せて、ひまわりのようなフリルのついた帽子を
かぶせたが、その帽子が、しゅんの無愛想な顔にあまりに似合わなくて
笑いが止まらなくなった。
ママが頑張って手作りした黄色いフリルのついた「おくるみ」にしゅんを包むと
いよいよ退院してしゅんと一緒に帰るんだ〜と喜びもひとしおになってくる。
 
おめかししたママとしゅん、パパも一緒に、長い間お世話になった
産婦人科外来の看護婦さんたちにしゅんをお披露目に行った。
顔見知りの看護婦さんが、私のためにお忙しい先生に診察室で待っていて
くださるようにお願いしてくださっていた。
看護婦さんに「おめでとう、いよいよ退院ね。さぁ、中で先生がお待ちよ。」
と案内され、いつもの診察室へ。
いつもと変わらない先生の笑顔に「先生〜!長い間本当にお世話になりました。
ありがとうございます!!」と何度も繰り返しながら、思わずボロボロ涙が
こぼれて止まらなくなってしまった。
 
先生にしゅんを抱っこしてもらって、看護婦さんたちもみんなで一緒に
記念撮影。
小さな男の子のママの看護婦さんに「男の子は本当にかわいいわよ。
それに、小さくたってとっても頼もしいの。
きっとママのこと守ってくれるようになるわよ。」と言われ、
この子がそんなそんな風に頼もしく成長していくのをふと想像して
小さな片目の横顔がますます愛しく感じた。
 
先生、急に思い出したように「あ、そうだ!あなたにこれだけは
言っておきたいことがある。
くれぐれも赤ちゃんの体重計だけは借りたりしないようにね!」
思わずダンナと顔を見合わせた。
「・・・あの〜、もう借りてきて車に乗ってるんですけど〜」と言うと
先生「・・・遅かったか〜!もっと早く言っておけばよかった!
体重計なんかいちいち乗せて測って一喜一憂しているようじゃ
精神的にもたなくなっちゃうから、体重計には乗せちゃダメだよ。」
「乗せちゃダメって言われても、せっかくレンタルしてきたのに〜!」と
不満気に抗議すると先生、「じゃあ、測ってもいいけど、その代わり
毎日計るのは禁止!そうだなー1週間に1回ってとこかな。
それ以上はゼッタイに測っちゃダメ。ダンナさんも、くれぐれも
ママが毎日計らないよう気をつけてあげてくださいね。」とかなり厳重に
釘をさされた。
「・・・それにしても、先生なんで私が体重計を借りてくる、ってことが
分かったんですか?」と聞くと、先生「あなた見てりゃバレバレでしょ。」
と、あっさりひと言。
「この先生は、産婦人科だけでなく、きっと精神科でもやっていけるかも!」
と、「一般人」の私は目からウロコ状態。
 
「これから大変だけど頑張ってね。」と先生に激励の言葉を頂き、
外来診察室を後にした。
 
外はどしゃぶりの雨。
入院した日の夜もすごい雨だったそうなので、しゅんはやっぱり
私の血を受け継いで「雨男」なのかもしれない。
ダンナが車を駐車場から出して迎えにくるのを、しゅんを抱えながら
正面玄関で待っていた。
「検診ですか?」中年の女性が声をかけてきた。
「いいえ、今日退院なんです。」と答えると、その人
「ま〜。赤ちゃん大きくてしっかりしたお顔してるから、てっきり
検診なのかと思ったわ。ご退院おめでとうございます!」
その女性の声につられて、周りの人達が数人集まってきた。
「わ〜カワイイ赤ちゃんですね!」
小さな子供も近寄ってきて「ママ、赤ちゃんだよ!」「ホントだ、カワイイね〜!」
たくさんの人の輪に囲まれる。
「・・・みんな私の赤ちゃんを見てるの?
今まで私はこの人達のように、他人の赤ちゃんを囲むことしか出来なかったのに
今、こうしてみんなが私の赤ちゃんを囲んでカワイイって言ってくれてる。
この子は他人の子じゃなくて、正真正銘、私の赤ちゃんなんだーー!」
そう思ったら、もう嬉しくて、嬉しくて、周りの人達に「ありがとうございます!」
と言いながら、またもやボロボロ涙が止まらなくなってしまった。
「あらあら、ママ泣いちゃったね〜!」と、中年の女性は慌てていた。
 
迎えの車が玄関に到着。
しゅんを借りてきたばかりの新品のチャイルドシートに乗せて、
慎重に、慎重に、安全運転で我が家へ向かった。
車の後ろのガラスには、もう早々と取り付けられた「赤ちゃんが乗っています」
のプレートがゆらゆら揺れていた。
長い間待ちつづけた我が家の天使、しゅんとの生活が今日から始まる!!

 

 


 
          《最高のお産日記 完》         HOMEへ戻る