沐浴指導。
看護婦さんからベビーバスでの沐浴の手順を教わる。
たまたま、ベビー達の沐浴の時間だったらしく、裸ん坊にされたしゅんが
運ばれてきた。
若いカワイイ看護婦さんにお風呂に入れてもらって、気持ちよさそうに
だら〜んとリラックスしているしゅんについつい目がいってしまい、
沐浴の授業はまったく上の空になってしまった。
早くしゅんを自分でお風呂に入れたくてうずうずした。
夜、しゅんのオムツを替えたら、そのとたんブリブリウンチをされてしまい、
あらあら〜!と再度替えたら、またその直後にウンチでまたまたオムツ替え。
ものの5分で3回もオムツを替える始末。
病院のオムツながら「何ともったいない!」と、ついつい思ってしまった。
これが自分の家だったら本気で腹が立ちそうだ。
5/18 産後4日目
朝の授乳から、しゅんはだいぶオッパイに慣れてくれたようで
少しずつ飲む量が増えてきた。
といっても、まだ10ccとか14ccとかだが、それでも数字になって見える
だけで、ものすごく嬉しい。
オッパイを吸わせている時間もまだ両方で一回30分もかかってしまうが、
この授乳量の数字を見ると、嬉しくてそんな疲れも吹き飛んでしまう気がする。
いよいよお楽しみの沐浴実習。
ベッドからしゅんを連れてきて、実際にお風呂に入れながら指導を受ける。
沐浴指導は、区の母親学級でも、育児講習会でも習ったし、昨日も
看護婦さんから指導を受けて手順はしっかり頭に入ってるはずなのに
いざ、本物の赤ちゃんを前にすると妙に緊張する。
落ち着いて、習った通りの手順で、左手のひらにしゅんの頭を乗せ、
親指と小指で耳を押さえて、右手で小さなお顔に「3の字」を描きながら
丁寧に洗ってあげた。
背中を洗う時、しゅんをうまくひっくり返せなくて、看護婦さんから
「手のひらじゃなく、腕全体で支えるようにひっくり返すと赤ちゃんが安心よ。」
と教わり、言われたとおりやってみる。
なるほどこの方が赤ちゃんも安定するな〜とママも安心。
湯船からあげて着替え台の方に連れて行くとき、ビショビショのしゅんを
思わずブンブン振って水気を切ってしまい、看護婦さんに
「赤ちゃんはお野菜じゃないですから水は切らなくていいです」とひと言。ヾ(^_^;)
まぁ、いろいろあったものの、何とか落ち着いて習った手順どおり沐浴が完了。
看護婦さんにも「そんな感じで大丈夫ですよ。」と言われ、ほっとしたが、
後からよくよく思い返してみると、やっぱり緊張してたせいか、しゅんの顔を、
洗面器のお湯ではなく、バスタブの中で洗ってしまったことを思い出し
「しまったー!」と慌ててしまった。
前日に面会に来てくれた妹が、デジカメで撮ったしゅんの画像を、
カードに加工して持ってきてくれた。
退院の時に、先生や看護婦さんに渡せるように、と、消灯後
ベッドの上で、そのカードに長い長い「感謝状」をせっせと書いた。
夜の授乳の時、今までの最高新記録、オッパイを20ccも飲んでくれた。
「たった20cc」ではあるが、生後2日目でやっとこさミルクを飲み終えた時
と同じ量、と考えると、この2日間、14回の練習でこんなにも成長して
くれたのか〜と、小さなしゅんに感謝の気持ちでいっぱいになる。
そばにいたママさんや看護婦さんたちにも
「しゅんくん、オッパイよく飲めるようになったねー。
なかなか上手に飲めなくって、初めて4cc飲んでくれた時には、
ママ思わず感激で泣いちゃってたもんねー。」と、みんなで喜んでくれた。
5/19 産後5日目(退院前日)
しゅんは、オッパイを32cc飲めるようになった。
もう、ちゃんと吸われて、母乳が出てくる感覚がはっきり出てきて、
しゅんの表情も心なしか安心して、おいしそうに飲んでいるように見えた。
昨日出産した新しい産婦さんが今日から授乳室のメンバーに加わった。
慣れない手つきで赤ちゃんにオッパイをあげていたが、なかなか
吸い付いてくれず、途方にくれた表情。
横目でゴクゴク飲んでいるしゅんをチラッと見て小さくため息。
「まだ産後初日でしょー?私が初めて4cc飲んでもらったのなんて、
オッパイが出たのは3日目の朝だったのよ。」
どこかで聞いたようなセリフ?一昨日自分が励まされたのと同じ
言葉をかけていた。
「本当〜?」ママさんちょっと安心した表情。
「ね?今こんなに上手になった先輩ママさんも、最初はそうだった
って聞くと安心するでしょう!」と看護婦さんもニコニコ。
ふふっ、あんなに残業続きの「居残り組」だった私としゅんが、
たった3日で「先輩面」なんかしちゃって!と、ちょっと照れてしまった。
退院前の診察。
産後初めてエコー画面を見た。子宮の中は真っ黒で何もない。
8ヶ月ぶりの真っ黒な画面。8ヶ月前まで長いことずっと見ていた
虚しい真っ黒な画面が、この時妙に懐かしく感じた。
先生が画面を指差し「胎盤も残ってないですね。でも、まだ
ここんとこ血の固まりか、胎盤の残りカスらしきものが見えるので
しばらく悪露は続くと思うから、産後の1ヶ月検診の時に経過を見ましょう。
退院後、酷く出血したり、大きな固まりが出てくるようなことがあったら
1ヶ月検診を待たずにすぐに来てね。とりあえずは問題ないでしょう。」
と簡単に説明。
「手術前からあった子宮の後屈は、やっぱりお産でも元に戻らなかったね。
まぁ、もともと生まれもっての形ってものもあるからねー。」
そうなんだ〜。ちょっとガッカリ。
診察は簡単に終わり。「先生、長い間本当にありがとうございました!」と
昨晩心をこめて書いた「感謝状」を先生に手渡した。
ラブレターを渡すみたいでちょっと緊張!(笑)
「後でゆ〜っくり読ませてもらうね。」と先生もちょっと嬉しそうにニヤニヤ。
夜の授乳の時、部屋に入ると、ベッドに寝かされていたしゅんの枕もとに
病院の名前の入った書類袋が置いてあった。
中を開けると、誕生後に記念撮影してもらったらしく、大きなしゅんの写真。
片目のまま、「ニヤリ」とお得意の笑顔のとてもいい写真が
ステキな台紙に収められていた。
病院のサービスでやってくれているらしい。なんてステキな出産祝い!
感激で胸が一杯になった。
5/20 産後6日目(退院の日)
午前中の最後の授乳の前に仲良しになったママさん達のお部屋に
おじゃまして、みんなで記念撮影&住所の交換。
「写真送るねーメールするねー!」と、みんなと名残惜しみながら
延々おしゃべりに花が咲く。
最後の授乳も終わり、新生児室の看護婦さん、助産婦さん達
ひとりひとりにお世話になったお礼をして部屋を出る。
ダンナが迎えに来てくれる時に、通り道にあるレンタルショップで
前から予約していた「新生児用チャイルドシート」の他に「ベビー体重計」
を借りてきてもらうように電話した。
ずっと、母乳の量を測ってミルクを足す方法でやってきたので、
やっぱりしばらくの間は同じ方法でやっていった方がやりやすいだろうし、
第一、途中でオッパイが出なくなって、しゅんがお腹をすかせるような
ことでもあったら大変だ!
お昼前、荷物をまとめているところにダンナのお迎えが来た。
会計を済ませ、最後の病院食を簡単にすすりこむ。
新生児室にしゅんを迎えに行った。
タオル地のかいまきを着せられていたしゅんに、かわいい刺繍のついた
真っ白なベビードレスを着せて、ひまわりのようなフリルのついた帽子を
かぶせたが、その帽子が、しゅんの無愛想な顔にあまりに似合わなくて
笑いが止まらなくなった。
ママが頑張って手作りした黄色いフリルのついた「おくるみ」にしゅんを包むと
いよいよ退院してしゅんと一緒に帰るんだ〜と喜びもひとしおになってくる。
おめかししたママとしゅん、パパも一緒に、長い間お世話になった
産婦人科外来の看護婦さんたちにしゅんをお披露目に行った。
顔見知りの看護婦さんが、私のためにお忙しい先生に診察室で待っていて
くださるようにお願いしてくださっていた。
看護婦さんに「おめでとう、いよいよ退院ね。さぁ、中で先生がお待ちよ。」
と案内され、いつもの診察室へ。
いつもと変わらない先生の笑顔に「先生〜!長い間本当にお世話になりました。
ありがとうございます!!」と何度も繰り返しながら、思わずボロボロ涙が
こぼれて止まらなくなってしまった。
先生にしゅんを抱っこしてもらって、看護婦さんたちもみんなで一緒に
記念撮影。
小さな男の子のママの看護婦さんに「男の子は本当にかわいいわよ。
それに、小さくたってとっても頼もしいの。
きっとママのこと守ってくれるようになるわよ。」と言われ、
この子がそんなそんな風に頼もしく成長していくのをふと想像して
小さな片目の横顔がますます愛しく感じた。
先生、急に思い出したように「あ、そうだ!あなたにこれだけは
言っておきたいことがある。
くれぐれも赤ちゃんの体重計だけは借りたりしないようにね!」
思わずダンナと顔を見合わせた。
「・・・あの〜、もう借りてきて車に乗ってるんですけど〜」と言うと
先生「・・・遅かったか〜!もっと早く言っておけばよかった!
体重計なんかいちいち乗せて測って一喜一憂しているようじゃ
精神的にもたなくなっちゃうから、体重計には乗せちゃダメだよ。」
「乗せちゃダメって言われても、せっかくレンタルしてきたのに〜!」と
不満気に抗議すると先生、「じゃあ、測ってもいいけど、その代わり
毎日計るのは禁止!そうだなー1週間に1回ってとこかな。
それ以上はゼッタイに測っちゃダメ。ダンナさんも、くれぐれも
ママが毎日計らないよう気をつけてあげてくださいね。」とかなり厳重に
釘をさされた。
「・・・それにしても、先生なんで私が体重計を借りてくる、ってことが
分かったんですか?」と聞くと、先生「あなた見てりゃバレバレでしょ。」
と、あっさりひと言。
「この先生は、産婦人科だけでなく、きっと精神科でもやっていけるかも!」
と、「一般人」の私は目からウロコ状態。
「これから大変だけど頑張ってね。」と先生に激励の言葉を頂き、
外来診察室を後にした。
外はどしゃぶりの雨。
入院した日の夜もすごい雨だったそうなので、しゅんはやっぱり
私の血を受け継いで「雨男」なのかもしれない。
ダンナが車を駐車場から出して迎えにくるのを、しゅんを抱えながら
正面玄関で待っていた。
「検診ですか?」中年の女性が声をかけてきた。
「いいえ、今日退院なんです。」と答えると、その人
「ま〜。赤ちゃん大きくてしっかりしたお顔してるから、てっきり
検診なのかと思ったわ。ご退院おめでとうございます!」
その女性の声につられて、周りの人達が数人集まってきた。
「わ〜カワイイ赤ちゃんですね!」
小さな子供も近寄ってきて「ママ、赤ちゃんだよ!」「ホントだ、カワイイね〜!」
たくさんの人の輪に囲まれる。
「・・・みんな私の赤ちゃんを見てるの?
今まで私はこの人達のように、他人の赤ちゃんを囲むことしか出来なかったのに
今、こうしてみんなが私の赤ちゃんを囲んでカワイイって言ってくれてる。
この子は他人の子じゃなくて、正真正銘、私の赤ちゃんなんだーー!」
そう思ったら、もう嬉しくて、嬉しくて、周りの人達に「ありがとうございます!」
と言いながら、またもやボロボロ涙が止まらなくなってしまった。
「あらあら、ママ泣いちゃったね〜!」と、中年の女性は慌てていた。
迎えの車が玄関に到着。
しゅんを借りてきたばかりの新品のチャイルドシートに乗せて、
慎重に、慎重に、安全運転で我が家へ向かった。
車の後ろのガラスには、もう早々と取り付けられた「赤ちゃんが乗っています」
のプレートがゆらゆら揺れていた。
長い間待ちつづけた我が家の天使、しゅんとの生活が今日から始まる!!
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